梁(はり)の役割、柱との違いは?
家を支える二大骨組みが「柱(はしら)」と「梁(はり)」です。垂直に立ち、地震や風の力に耐えるのが柱。その柱の上に横へ渡され、屋根や床の重みを支えるのが梁です。
普段は天井裏に隠れている梁ですが、あえて天井を外して見せる「天井あらわし」にすると、住まいに次のメリットが生まれます。
・開放感のアップ
天井に奥行きが生まれ、コンパクトな部屋でも圧迫感を解消できます。
・風通しと空気の循環
室内容積が増えるため、部屋の中の空気がスムーズに巡ります。
・自然光を引き込む採光
高い位置から光を取り込み、部屋の中央まで明るさを届けてくれます。
梁を表舞台に引き出すことは、広がりと心地よい光・風を住まいに呼び込む秘密の工夫なのです。
天井裏に眠っていた、築48年の立派な「丸太梁」
「離れた場所にいても、家族がつながりを感じられる家にしたい」
そんな願いから始まった築48年のリノベーション作業で壁や天井を取り払うと、頭上から立派な「丸太梁」が姿を現しました。48年間、暗闇で家を支え続けてきた力強い姿を生かさない手はありません。
このお宅で一番日当たりの良い場所は、2階南側の子ども部屋でした。そこで、この光を家中に巡らせる工夫を凝らします。
2階の寝室や収納との仕切り壁は上部に「抜け」をつくり、空間を仕切りすぎない設計に。
丸太梁の隙間を通って、豊かな光と空気が他の部屋や階下へと心地よく流れ出す住まいへ生まれ変わりました。
決定権は少年に!放課後の作戦会議
工事が着々と進むなか、代表・湯川の頭にひとつのアイデアがひらめきました。それは子ども部屋のメイン窓とは別に、もっと高い位置へ「月が見える窓」をつくること。
そこで湯川がまず向かったのは、ご両親ではなく、お部屋の本当の主である息子さんのもとでした。
学校帰りの息子さんに「月窓をつけてみない?」と相談を持ちかけ、ふたりだけの秘密の作戦会議がスタート。
一年の中でも月がきれいに見える秋分の頃に、ちょうどそこから月を眺められるよう、位置を考えて設置しました。
窓の形もすべて息子さんと一緒に話し合って決定。放課後のワクワクするような時間から、夜空とつながる特別な窓が生まれたのです。
一年中心地よい空気がめぐる、ぬくもりの天井断熱
天井を取り払う「天井あらわし」で特に欠かせないのが、徹底した断熱対策です。
屋根からの熱気や冷気を防ぐため、天井裏には断熱材をぎっしりと充填。
その上からベニヤ板で丁寧に塞ぎ、しっかりと守りを固めました。猛暑の夏も冷え込む冬も、一年を通していつでも心地よい空気が家族を優しく包み込みます。
仕上げのベニヤ板はあえて無塗装のまま仕上げ、木そのものが持つさわやかで素朴な色味と質感を存分に活かしました。
太陽と月が見守る、家族のこれから
2階はコンパクトなスペースながら、頭上に心地よい「抜け感」があることで、そこにいるだけで気分までゆったり。
子ども部屋から差し込む太陽の光は、丸太梁の隙間を通って家中を心地よく巡ります。
お引き渡しからしばらく経った、9月の十五夜。中秋の名月を迎えたその日の夜、ご家族から一枚の写真とともに嬉しいメッセージが届きました。
「月窓から、きれいに月が見えました!」
画面に映っていたのは、あの日少年と一緒に決めた窓から覗く、まんまるなお月様。
大人と少年が企てた秘密の窓が、ご家族の特別な時間を映し出している――そう実感した瞬間、胸がいっぱいになるほどの感動がこみ上げてきました。
この夜の出来事が、何年経っても色褪せない素敵な思い出になってくれるといいな、と思います。
また、2階の廊下の一角に設けたワークスペースで働くご主人も、仕事の手を止め、ふと天井を見上げるたびに梁の佇まいに心を癒やされているのだそう。
「そんな時いつも、『ああ、いい家だなあ』って思うんです」
昼は太陽の光を部屋の奥まで届け、夜は月明かりをやさしく受け止める。そして頭上では、48年前から変わらず木組みの梁が家族を温かく見守っている——。
ただ暮らす場所というだけでなく、ふとした瞬間に住まう人の心を満たしてくれる、特別な家が完成しました。
こちらのお宅の詳しい写真は、下記の【施工事例を見る】からもお読みいただけます。